音楽をすることは、人生に大きな喜びをもたらします。それは、言葉を超えたコミュニケーション手段であり、自分自身を表現する強力なツールです。私にとって特に印象深いのは、ジャズを通じてさまざまな人と出会い、すぐにセッションができるという瞬間です。音楽を通じて繋がる世界は、国境や文化、世代を超える広がりを見せます。演奏を通じて生まれる一瞬の共鳴は、言葉では表せないほどの充実感をもたらします。
しかし、その反面、音楽には犠牲も伴います。一つは、「意識高い系」になりがちな自分への葛藤です。音楽に没頭すればするほど、自分の価値観が狭くなるような感覚に陥ることがあります。特にジャズのような高度な即興性を求められるジャンルでは、オタク的な情熱と探究心が必要であり、それは時として他の活動や人間関係を犠牲にします。「音楽」という共通項を持たない人との距離が広がることもあります。さらに、夢中になりすぎて、自分の時間やエネルギーをすべて音楽に費やしてしまうことで、他の大切なことを見逃してしまうリスクも感じます。
一般的に、音楽をやることには二面性があります。一方では、自己表現や達成感、人とのつながりを提供してくれる一方で、孤独感や競争心、自分の限界への挑戦といった側面も伴います。また、音楽を生業にしようとする場合、経済的な安定を得るのが難しいことも事実です。一方で、趣味として音楽を楽しむ場合、純粋に自分のための時間として音楽を位置づけることで、精神的な充実を得られるというメリットがあります。
結局のところ、音楽は広がる世界と閉じる世界の両方をもたらす存在です。それは、自分の情熱に素直になる機会を与えてくれる一方で、自己の内面を深く掘り下げ、他者との関係性を再考させるきっかけともなります。音楽を通じて得たもの、そして失ったもの、その両方を受け入れることで、人は音楽という道を進んでいくのではないでしょうか。